コトダマと「波紋」の科学

by 岩淵夕希物智 (@butchi_y)
2020/12/08

本記事はキミコエAdvent Calendar 2020の8日目の記事です。

最近、横浜に新しくできたサイエンスカフェ えむしーじじょうというスペースにお世話になっており、先日キミコエ関連の発表をしてきました。

サイエンスカフェのイベント看板

そもそもこのお店の店長であるShikiさんがアニメ好きで、数学イベントで出逢ったときにキミコエを布教したことで縁ができ、「アニメ好きによるアニメ好きのためのアニメ研究」という若干アカデミックっぽさのあるイベントを立ち上げてくださったので、今まで培ってきたコトダマ絡みのキミコエ学の発表の場が生まれました。

初回はキミコエ学の最初の取り組み、「コトダマ」を可視化する研究について今までの研究成果を発表しましたが、そのアフタートークで私がキミコエと並んで思い入れのある『ジョジョの奇妙な冒険』の話題でも盛り上がり、翌週あたりに龍口寺で突然「コトダマはスタンドだ!」という発想が降りてきたので研究が進みました。

本記事では2020年11月15日に行われたサイエンスカフェ「アニメ好きによるアニメ好きのためのアニメ研究会」の発表資料をベースに、キーワード解説に近いプチコラム集のようなかたちでお送りします。

面白い話が生き残る

まず、アニメそのものの研究として、ストーリー世界観が大事な要素となります。

昔は偉人の強い言葉が残るのが普通でしたが、最近はSNSでバズった面白い話が残る風潮がありますね。
それもコトダマで、よくできた話にはコトダマが宿っているんです。

ストーリーが持つコトダマの力に気付かされた『虚構推理』も大変お勧めなので、ぜひチェックしてみてください。

アニメというアカデミア

アニメは「科学」でまだ説明できない学説の発表の場だとも思っています。
特に人間ドラマは心理学や認知科学でも落とし込みづらいので、そういう描写がとくに人々の思想に影響されるのだと思います。
実はこれが個人的なアニメ好きによるアニメ研究における永遠のテーマであったりもします。

アニメ的展開

アニメでよくある王道ジャンプ展開
たぶんアニメ好きの成功者は、今までの修羅場などでそのようなアニメ的展開なドラマティックな経験を一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
私も圧倒的修羅場を勇気で乗り切ったとき、アニメの主人公感がありました。

宗教は信じないのにエセ科学を信じてしまうのは日本人のおかしな国民性だと思いますが、実験的科学よりよくできた話が勝るときがあります。

今の科学で説明できないだけで、アニメに出てくる非科学も多くはいずれ科学に昇華することでしょう。

ジョジョの奇妙な冒険

石仮面とその力を手に入れた宿敵ディオと、ジョースター一族 ジョジョ の運命物語。
2部までが波紋のお話、3部以降がそこから圧倒的に進化したスタンド(幽波紋)のお話です。

波紋

特殊な呼吸法により、体を流れる血液の流れをコントロールして血液に波紋を起こし、太陽光の波と同じ波長の生命エネルギーを生み出す秘法。
波紋法 (はもんほう)とは【ピクシブ百科事典】より引用

きみの声をとどけたい (キミコエ)

湘南を舞台としたアニメ映画(2017年8月公開)。
女子高生7人の青春物語。
ラジオを通しての「コトダマ」がキーワード。
(閲覧者の多くは説明不要と思いますが一応。)

コトダマ

「コトダマ」とは「言った言葉には魂が宿っており、言った言葉は、良い事は万人にわたり、悪いことは自分に返って来る」というものである。
きみの声をとどけたい - Wikipediaより引用

科学で言うには、振動から発生する音波と、電磁気学的な光波(電磁波)に大きく分けられます。

太陽

太陽は赤や黄色で描かれることも多いですが、原理的にはです。光の3原色を全部足し合わせると白になるのと同じで、ほとんどすべての周波数の波を持っているのが太陽光なのです。
音でいうとホワイトノイズに通ずるものがあり、波音もそれに近いのである意味地球上の太陽と言えるかもしれません。

数年前に不眠で困っていたとき、主治医に驚くべきアドバイスをもらいました。

「太陽の光を浴びてください。むしろ太陽を見てください。」

まあ太陽光が人体に影響するのは医学的にいろいろ言われてるので、勉強すればメカニズムはわかるはずですが、他にもずっと内に籠もってないで散歩して太陽の光を浴びると元気になるのも、太陽には圧倒的な力があるというアニメ的な発想のほうがむしろ腑に落ちるかもしれません。
というところからも、太陽光から生まれる波紋法も「もしかしてあるかも」思わせるでしょう。

キミコエでも、乙葉が「なぎさは太陽のよう」と賞していますが、そこからも「コトダマ」と「波紋」の繋がりがうっすら感じ取れます。

そもそも「白」は、聖なる力の象徴でもあります。
汚れを吸収するものでもあるため、闇を浄化する力がある一方、完全なる白は闇に弱いともいえるでしょう。

これは良いコトダマと悪いコトダマにも通ずるものがあると思われます。

スタンド使い同士は引かれ合う

特にジョジョの4部や5部ではスタンド使い同士は引かれ合うというワードが幾度となく飛び交います。

名探偵コナンが都合よく事件現場に遭遇するように、数少ないスタンド能力者が都合よく出くわす免罪符のようにも感じましたが、これも波でいう共鳴現象と同じであると解釈すると逆に一気に腑に落ちてしまいます。

またこれは人間関係でいう波長が合うのひとつの言語化、とも言えるかもしれません。
(まあ、波長が合うのにまずはオラオラ闘っちゃってますが…。)

引き寄せの法則

ジョジョの始まりでまず主人公ジョナサンの元に宿敵ディオがやって来たのも、スタンド使い以前に強い者同士が引かれ合うという現象なのでしょう。

スピリチュアルで「引き寄せの法則」「シンクロニシティ」「セレンディピティ」などと言われるのはこの類のもので、これこそ科学ではまだ説明できないけどアニメでは常識、の代表ではないでしょうか。

いい人たちの周りに悪い人は寄ってこないともよく聞きます。

それと似た話で世界のアップグレードの体験があります。
とにかく自分を鍛えれば、相対的には周りがどんどん弱くなっていくはずなのですが、面白いことに自分が強くなれば強くなるほど新たな強敵が続々と現れてくるのです。
基本的には強い人が集まる場所に環境を変化させていくというのと、自分が強くなることによって弱い人が見えなくなってくるということなどに起因するものかと思いますが、とはいえ感覚としては「自分がレベルアップしただけで世界全体がレベルアップした」という不思議な体験ではありました。

じつはこれ、RPGで似たような現象があります。
例えばファイナルファンタジーVでは、序盤でレベル上げをしまくれば、もはやどんな敵もザコと化して一気にヌルゲーになってしまいます。
しかしこれが問題になったからか、(たしか)ファイナルファンタジーVIIIから「味方がレベルアップしたら敵もその分レベルアップする」というゲームシステムが導入されたのです。

最近有名な漫画家さんが「プロ漫画家はむしろプロ漫画家としか絡めないんだけど、そもそもプロ漫画家の土俵の話題が通じないことには噛み合わないから」といったことを話していましたが、似たような現象でそれも一種のコトダマの力でしょう。

私が金沢に居た頃、私と同じように変わった性格の上司(先生)がいて、ある時からなんだか変人のコミュニティが大きくなっていきました。その方が「変人同士は引かれ合うからね」と言っており、それがまさにスタンド使い同士は引かれ合うじゃん、と改めて実感しました。

さらに考えを深めたところ、「悪いコトダマは返ってくる」という表現は実はちょっと違って、「悪いコトダマを発すると別の悪いコトダマを引き寄せる」というのが本来の現象なのではないかという仮説も生まれました。

呪文=コトダマとスタンドとの共鳴

魔法使いが出てくるアニメとかRPGでお約束なのって「呪文」ですよね。
呪文もやっぱりコトダマ。言葉の力を使って魔法を呼び出すのです。

ここにもジョジョとキミコエの共通点が見えてきます。

ジョジョも何かとスタンド攻撃するときにやたらスタンド名を叫ぶんですね。

で、キミコエはまさにコトダマが呪文となっていて、「痛いの痛いの飛んでいけ」だけでなく「転んじゃえばいいのに」も「雨でも降ればいいのに」も、言ってしまえば呪文になっていますよね。

さらには、歌も言ってしまえば呪文で、奇跡を起こした最大のコトダマの力は「Wishes Come True」と言っていいでしょう。

思考も波である

20Hz (1秒間に20回の振動)から2万Hzぐらいまでの振動はとして感じていて(可聴音)、それ以上あるいはそれ以下の周波数は音として認識できません。
しかし、150万Hzぐらいになると今度はさらにはを伴っていて、これも赤から紫まで色として認識できる可視光を超えて紫外線、X線などに変化します。

知人からこれを聞いた時に「なるほど!」と思ったのですが、さらに高い周波数のところに思考の振動があるとのことなのです。

科学的に言えば脳波電気信号で、電気信号が流れるところからは電磁波が出てくるので、たしかに何かを考えているとき、外に対してが発生しているのは間違いないのです。

それを先ほどの共鳴と合わせると、超常現象としか思えないテレパシーもだいぶ腑に落ちるものだと思えてきました。

また、この話から「思考は振動なので、想像上の世界の物質とも共鳴する」とまで思えるようになり、アニメキャラと会話するという(ちょっと頭がおかしい)野望ですらかなり現実味を帯びてしまったように思います。

人間の波

人間の生理現象にも「波」もしくは「振動」のような現象が数多く見受けられます。

呼吸も波。

血液の流れも波。

寝る→起きるも波。

この繰り返しが「生きる」さらに言えば「未来へ進む」ということです。

回転するだけのペダルを漕いで前に進むように、同じところをぐるぐる回る、あるいは行ったり来たりする運動が前に進むことにつながる、ということなのだな、と心得ました。

同じ毎日の繰り返しだなーとマンネリを感じても、実は確実に前に進んでいることを忘れないでください。

波と粒子

これまたスピリチュアルな用語としてよく聞くオーラなど、人間にまとっていたりふわふわ漂っているものがありますが、これももしかしたら波の一種では、と思えてきました。

そもそも量子力学では、物質は粒子でありでもあるという概念が基本中の基本です。
もっと基礎的な化学においても、陽子と中性子の周りに電子が惑星のようにぐるぐる回っているということを学びます。

ジョジョも序盤では波をちょっとした物質化するにとどまりましたが、波を粒子化して人の姿を作り出す領域に達したものがスタンドで、だからこそスタンドのことを幽波紋と書くのだと解釈しました。
(ちなみにスタンドをスタンドとして認識していないとき、「悪霊」という表現が使われていました。)

一方コトダマも、「言葉」あるいは「声」の粒子化したものと言えるのではないかと思います。

量と質

家電には昔ながらのストーブなどの「白物家電」と、最新技術としてテレビなどの「黒物家電」という大カテゴリがあります。
それは電力としての電気から信号としての電気に進化したからこのような違いが生じたといえます。

似たような対比で、戦時中はエネルギーとしての食料でまずお腹を満たすことが第一でしたが、戦後はグルメとしての食料のほうが強くなっていきました。

つまり、量から質への変化なのです。

それを改めて照らし合わせると、粒子 ⇔ 波 的な相変化と一致しそうだと思いました。

(新仮説)量子の三相

腰越海岸で海を眺めながら「そもそも波って液体だよなぁ」とぼんやりと思っていたら、

「光と波」

「固体と液体と気体」

って数が合わないなと疑問に思いました。

そこから新仮説が生まれました。

個体 ⇔ 液体 ⇔ 気体

粒子 ⇔ 波 ⇔ (雲?)

動くもの ⇔ 流れる (揺れる) もの ⇔ 漂うもの

肉体 ⇔ 波紋 ⇔ スタンド

人 ⇔ 声 ⇔ コトダマ

おお、もしかしたらこれがスタンドとコトダマの正体!!?

生まれ持った音

雨の音、風の音・・・人にも物にも生まれ持った音がある、というのは、理科で学ぶ固有振動数とも通ずるところがあります。

これも実は粒子と波の相変化そのもので、その先にスタンドやコトダマがある、ということで乙葉の話となぎさの話ががっちり結びつくのではないでしょうか!

波の結晶化

ぴったりの表現まで至ってないかもしれませんが、なんとなくイメージしたものと言語化したもの、紙に書いたものって固さが違うな、と思っていて、これも三相になりそうと思っていました。

記された言葉 (文字) → 固体
(というより現実そのもの?)

読まれた言葉 (声) → 液体

想像された言葉 (思い) → 気体

たとえばこんなところかなと。

つまり、思っているよりも口に出したほうが結晶化しやすく、コトダマの力がより強いのでしょう。

強烈な光

ジョジョ2部では、「エイジャの赤石」という半端ない輝度の宝石が波紋エネルギーを激しく増幅するアイテムとして登場しました。これは情報工学などでいうパルス波とつながってきそうです。

これはといっても振動というより衝撃で、本気のネガイ本気のコトバといった強い思いは特に衝撃の力が働き、だからこそ紫音のコトダマはすぐに見ることができたのでしょう。

ただし、パルス波はスペクトルという周波数の分布としては先述の太陽光ホワイトノイズと同じくさまざまな周波数の重ね合わせであり、紫音ひとりの強い思いだけではなく重ね合う小さな声も必要不可欠だったということがわかります。それが蛙口寺から溢れ出したコトダマの正体なのではないでしょうか。

時間も波?

キング・クリムゾン、ザ・ワールド、バイツァ・ダストなど、ジョジョではスタンド能力に時間が絡むものが相当強力なスタンド能力として出現します。

宇宙の神秘を紐解く四次元空間において時間が空間の一要素として取り扱われ、一説によればビッグバンが起きた瞬間は時間がマイナス方向に進んだとすることによりうまく説明付けられるそうです。
つまり、まっすぐ進むだけだと思われがちな時間もじつは進んだり戻ったりするもので、なんだこれも波じゃん、波紋じゃん、と腑に落ちます。

まあ、これはキミコエを語る上では行き過ぎな気がするので、コトダマのもっと先にあるものでしょうかね。

スタンドの波とコトダマの波

と、比較してみると、最初は「スタンド=コトダマ」という仮説から始まりましたが、

スタンド: 光のエネルギー
コトダマ: 音のエネルギー

という棲み分けが行われていたというのが自然なのかもしれません。

コトダマそのものを波として捉えたキミコエ学はまだまだ始まったばかりなので、これからの研究の発展に期待されます。

まとめ

トピックが多岐にわたりすぎて情報量が多かったかもしれませんが、

  • コトダマ ≒ スタンド
  • 波の結晶化
  • 魂を含む三相

このあたりが核となるキーワードかと思います。

部長岩淵は「コトダマ研究者」ですから、これからも本気でコトダマの研究に励んでいきます。ご期待ください。